北へ・・・
soft_machine

歩いて、北へ
指ぜんぶ開いて 靴と歌おう
古い道 塗り替えられもせず
重ねられた ペンキ文字なぞるように

歩いて、北へ
ひと足ごとに 風向きが変わる
風は現われ 時々 私を透明にする
鏡のベンチで燃える落ち葉が
空に繋がっていて 見あげて呟く
進むほど深まる静寂 憧れ ため息
だんだん近づいてくる
冷たい悦びと鋭い純青

(それは たぶん月のせい)

(それは たぶん鳥のため)

歩いて、北へ
バス群 トラック網 電飾管
長時間バイト勧誘 言だまり
樵がたたきつける斧 散らばる細胞片
かつて人間を押し込めた 空っぽの貨車に乗って
燃やされた都市の 陶器片を拾おう
歩いて
裸足で
歩いて
足の裏で転がってる玉に
銀河の腕がぐっすり絡まって
搾り濾される 高熱色の真空
知らないものだけが通り過ぎ 赤くなってしずむ

しずむ・・・

しずむ・・・

しずむ・・・

やがて静かにふりつむ

打ちあげられた夜々に探す 耳殻の骨は
絶海で保育された神話 流氷と星座の下で
さらさら揺れる 白亞の夢たどる

歩いて、北へ





自由詩 北へ・・・ Copyright soft_machine 2024-05-08 20:09:56
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