稜線
中沢人鳥

あの山の稜線と
想像の痕跡が等しい
山頂付近に着せられた雨量
養分となって
発芽する竜胆は
どれひとつとっても
車内のラジオに届くことはない
それなりの高層ビルに裁断される形
は補完される
あのビルの中で展開される物語と
深緑の続き
その質量が等しい
枯葉を感じる外気
線は指より細く白くなっていく
冷たくなっていく
病院で生じては消えていく
生産関係の中に綴じられていること
それでも
デルフトの眺望に象られた輪郭よりも
美の硬度は高いはずだと信じている
なぞる指に託された
呼吸の仕方を
失くさないように
ポケットに
手をしまう


自由詩 稜線 Copyright 中沢人鳥 2024-05-01 16:39:41
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