ここに
トビラ
裸足で軽蔑した?
レンズ越しの光線
呂律の回らない教頭
目をつぶって描く校舎
戻らない昨日に触れようとしました
桃で開いた夏は
少し甘くて
産毛が大気に接する
ダダイストの実験は
図書館ですんでいて
しめった空気を吸う
しめきった君の横顔
緊張してる
好かれたくて
知らないふりをする
好きなことを
大切にしたくて
靴紐をほどいたら
もう戻れない気がして
皮を剥いたら
種が残るまで
食べきってしまう
自分の思考からケモノの匂いがして
ととのわない
とまどう、けど
その匂いを僕は知ってる
君に嗅がれたら
嫌われると思うと
僕は
白い仏像になろうとして
なんでもないような顔をして
『裸足で軽蔑した?』
僕の潔癖が殺したのは
君だったか僕だったか
両方だったか
あの夏だったか
ただ桃の酸味が
思い出から流れてくる
軽蔑はなかったよ
幼い思い込みがあって
生身からこぼれた涙があった
朽ちた校舎
名前の知らない同級生
青空から
卒業した僕は
工事現場で
お昼のお弁当を食べる
『口を動かす暇があったら手を動かせ』
君のことをあまり思い出さなくなって
好きとか嫌われたくないとか
思う前に話さないといけなくて
夏の暑さに今は死を感じる
布団に横たわって
昔よりよく動かなくなった体をさすって
靴下を履いて立ち上がる
昔は僕も裸足だったんだ
思い出がいくつかしたたって
玄関の鍵を開いて
階段を降りる
ここが僕の心
ここが僕の選んだ道
塩飴をなめて
苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて
のみこんで
僕はまだ生きている