よもやま話
藤原絵理子


居酒屋で隣り合ったおじさんは
おらぁ故郷を捨ててここまできたんや
なんて自慢気に言う
よっぽど話しかけやすい感じなんかな
どうでもいいけど
捨てたんじゃなくて
捨てざるを得なかったということで
そこんとこにこだわってしまう
捨てるも捨てないも自由ないい国だ
ガザやウクライナとは違う
ミサイルも飛んで来ないしね


「今 海外旅行に行くのは馬鹿々々しい
円が上がるのを待つっきゃないよね」
間もなくじいさんとばあさんばかりになると言うのに
呑気なもんだ
部屋にゴキブリが出ただけでひと騒動
砲弾の破片が窓を突き破るよりまし
とは思えない
呑気なもんです


ゴミ出しに行く朝の
清々しい青空
半島の北側からICBMが発射されても
庶民の日々の暮らしとは遠い
それでいい
あんまり過敏になったらこの国は
きっと「米英鬼畜」と似たようなことを叫び始める


誤魔化しだとしても
やっぱり平和がいい
格差がどうたらとか言うけど
戦争になって
個々には恨みも何もないのに
殺し合わなきゃなんなくなるより


自由詩 よもやま話 Copyright 藤原絵理子 2024-04-25 23:21:30
notebook Home 戻る