夢と後悔
番田 


昔のことを考えながら、今は見ている、何かを。電車の音がしている。そして知っている、そのことを。タイに、昔行ったときのことを思い出す。売却していなかった漫画本が本棚にはある。そして晩飯を食べに、あの日僕は出かけたのだっけ。車が真っ直ぐな道に続いていた。僕は屋台で、カオマンガイを食べて、スイカジュースを飲んだ。いろいろな人が、周りには、座っていた。昔訪れたことのある楽器店の記憶の中で、帰りに、母親と僕は二人でいた。でも、もちろん、日本人は、そこにはいなかった。遠くから電車の音が聞こえた気がした。僕はそばのドミのベッドの上で寝た。夢をその日は見たのかもしれない。もう、しかし、何か株を買おうだとは思わなかった。


今は夜の、弱い風を受けている僕はいた。冷蔵庫には、ずっと食べていないアイスが入っている。勝利を掴み取ろうとするには、焦りすぎたのだと、そのことを思い出して、たたずんでいた。外は雨が降っている。腹をすかせていたので、とても美味しかったが、食べきることは出来なかった。カラオケに行って、何かを歌いたかったが、株は、週末に驚くほど暴落したのだ。テーブルには黒いリモコン。夜道には続いていたいくつもの車の光。


今は、休みの終わりだった。悲しい思いが、そんなふうに、今日も、立ち込めている。でも、損をすることには慣れていたので、悲しくはない。それに欲しいものすらも無くなってしまった。金を使うということを目的として株を買っていたということに気付かされる。そうでければ、何か欲しいものを買っていたはずだ。船が、川を、横切っていく。人ではなく、それは彼の意思や好みによって、買われるべきなのだというものだろう。そう思ったのは、でも、一度や二度目どころの話ではなかった。そして、人が買う株というのは一体何を意味するのだろう。アップルならそれが、トヨタならそれが、彼自身の保有株になる。そんな事を考えていた。


散文(批評随筆小説等) 夢と後悔 Copyright 番田  2024-04-22 01:53:36
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