胡蝶の夢
短角牛

1人 部屋で泣きながら

ベランダの蛹に話しかけた

つらいね 寒空だね

春が待ち遠しいね 君は何色かな

雪が降る 雪が降る 

黄昏時 ベランダに出て

世界の境目を覗き込む

北風に揺れる蛹が 私以外に動く唯一で

寂しさが吹き上げていく


いつのまにか 蛹は割れ

飛び立ったのか 誰もいなくて

でも 翌日の冷えた朝

揚羽蝶が凍えるように網戸に引っかかっていた

一夜 いてくれたのね 

夜露はしのげたかな

隣の一軒家のね 花壇が素敵なの

暖かくなったら 蜜を吸いにお行きよ


そんなことも忘れかけた 桜舞う季節

アセビの花に見惚れていたら

蜜を吸いにきたこの子に 

懐かしさを覚えるのは 夢を見過ぎかしら

夢でもいいなと思うけど












自由詩 胡蝶の夢 Copyright 短角牛 2024-04-14 23:42:21
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