開かずの踏切り
本田憲嵩

ごくありふれた電車がほとんど間断もなく何台も続いてゆく。そんな止めどない彼女のお喋りにその遮断桿が上がり切るのをただひたすらに待っている。しかしどうやら彼女の遮断桿は今のところ、その上がってゆく、ほんの僅かな気配すら見せることがない。それどころか今日の彼女のお喋りは、いつにも増してよりいっそう止めどがない。こうなったら僕はその電車と電車との僅かな合間に束の間かがやいている、赤い夕日を目がけて、急アクセルの意を決して、切り出しのスポーツカーで、その遮断桿にみずから突っ込んでいかなければ。そのくらいの強い気持ちをもって、僕は彼女に取り組んでいかなければ。そう、運命とはそうやって僕みずからのアクションできわめて積極的に動かしてゆくもの。そうやって僕自身が僕みずからの手で着実に掴みとってゆくもの――。


そうして決壊してもなおも下ろされたままの遮断桿と入り込んでしまった線路のなか、繰り広げられている彼女との会話から僕はいま抜け出せないでいる。交互に点滅するふたつの赤いランプが、交互に投げ出し合う赤いポールのように点滅しながら、開かずの踏切りの警報音はいまもなお鳴り響いている。
電車はもうとっくに通り過ぎてしまったというのに――。



自由詩 開かずの踏切り Copyright 本田憲嵩 2024-04-14 00:55:30
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