夜のテーブル
そらの珊瑚

テーブルの上で
蜜柑が燃えている
そのふところにたたえた水を少しずつ手放しながら
冷たく燃えている
つやつやとした
ともしび

坊やが食べこぼした
アルファベットびすけっとのかけらたち
自分が何者であったのか
手がかりは失われ
ただ小さな指の温かさだけをおぼえている
幸福なかけらたち

硝子のコップに挿した
パンジーたち
身を寄せあって水を飲む
そして夜のひそやかさに
耳をすませている

テーブルの淵に座った猫が
釣り糸を垂らすと
夜釣りに最適なSNSの海が現れる
魚が釣れたためしはないのだけれど
これから先釣れないとも限らない
昼寝をたっぷりした猫の目は
らんらんと光る金色
死んだ犬は帰ってこない

閉じられたカタログ
カラフルな薄い紙
昼に
角をさんかくに折られた
保留にされたページ
しかるべき手続きをして
手に入れれば
とたんにそれはモノログに変わる仕組み
手に入れた幸せが左脳で色褪せるように

天窓から射している
月の光
ここで宇宙が終わっている
という、青白いしるし
夜のテーブル
或いは
はこぶね


自由詩 夜のテーブル Copyright そらの珊瑚 2024-04-13 08:35:58
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