蛙男。
田中宏輔


まるで痴呆のように
大口あけて天を見上げる男
できうる限り舌をのばして待っている
いつの日か
その舌の上に蝿がとまるのを
(とまればどうすんの)
蛙のように巻き取って食うんだ
(と)
その男
舌が乾いては引っ込め
喉をゴロゴロ鳴らす
そうして、しばしば
オエー、オエー
と言っては
痰を飲み込む
(ほんと、いくら見ても厭きないやつ)
訊けば、その男
蛙がごときものにできて
人間たるわしにできんことはなかろう
(とか)
言って
じっと待つのであった
(根性あるだろう、こいつ)
ぼくはそんな友だちをもってうれしい
ほんとにうれしい


自由詩 蛙男。 Copyright 田中宏輔 2024-04-08 15:14:43
notebook Home 戻る