キドウ修正
菊西 夕座

――コン、コン、コン
「咳ですか?」
――ノックです。
「どうしました?」
――コン、コン、コン
「咳ですね?」
――ノックなんです!
「大丈夫ですか?」
――あけてください!
「どうしました?」
――咳がとまらないのです
「やっぱり咳でしょう」
――さっきのはノックです
「咳はどうしました?」
――とまらないのです
「ノックしか聞こえません」
――ノックしてますから
「咳もでてるはずでしょう?」
――手で抑えてます
「エチケットですからね」
――ノックの音とかぶるからです
「気道の音くらいわかりますよ」
――コン、コン、コン
「あいてます」
――今のが咳です
「席はあいてますよ」
――先生はほんとうに医者でしょうか
「実はコンぴゅ―たーなんです」
――コン、コン、コン
「咳ですね」
――ノックです
「学習しました」
――コン、コン、コン
「ノックです」
――ノーです
「惜しい」
――ノーとノックはまったく別物です
「ノまでは合っていた」
――ノしか合っていません
「コン、コン、コン」
――コンぴゅーたーです。
「すごい」
――さっきそうおっしゃってましたから
「コン、コン、コン」
――それは咳真似です
「見破られた」
――器用なコンぴゅ―たーですね
「コン、コン、コン」
――それはノック音です
「完璧だ」
――コンプリートでしょう
「あなたこそ真のコンぷりーたーだ」
――コンぴゅ―たーの上をいっちゃった
「ドン、ドン、ドン」
――頭を机に叩きつける音
「なんという天才!」
――ドンなもんだい
「問題はなにもありません」
――グEホッ!、グEホッ!、グEホッ!
「なんだろう?」
――グEホッ!、グEホッ!、グEホッ!
「ダチョウの雄たけび?」
――グEホッ!、グEホッ!、グEホッ!
「ぜんぜんわからない」
――ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン
「どんどんんわからない」
――しュー~、しュー~、しュー~
「息、ぎれ?」
――ドサっ。
「倒れる音!」
――・・・・・・
「コンプリーターさん?」
――・・・・・・
「ご名答ですか?」
――・・・・・・
「なんとかいってください!」
――・・・・・・
「神様!」
――コン、コン、コン
「ノック音!」
――咳にきまってます
「しまったー」
――あいてました
「どこ?」
――あなたのドア
「はいってたんですね」
――ご名答
「さっきのグEホッ!は?」
――あなたの操作音
「ドン、ドン、ドンは?」
――あなたへの質問入力
「しュー~、しュー~、しュー~は?」
――あなたの診断解セキ
「どうなりました?」
――いま、しんだんです
「わたしは死んだ?」
――しんだん中です
「診断?」
――よくきいてください
「どっち?」
――いま、しんだんです
「ききわけられない」
――わたしを診てください
「見ている」
――しんだんしてください
「もう死んだんだ」
――ちゃんと診てください
「コンがらがってわからない」
――いま、解セキ中です
「セキはでてない!」
――しんだんコンぴゅ―たーなんでしょう!
「しんだんだあ、最初からしんだんだあ」
――ドク、ドク、ドク
「ドント・コール・ミー、“ドクター”!」
――ただの心拍音です
「再起動したのか!」
――どサっ。
「サどうした?」
――コン、コン、コン
「咳ですか?」
――もう直りました
「もう?」
――お大事に


自由詩 キドウ修正 Copyright 菊西 夕座 2024-04-07 19:02:41
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