メモ
はるな
たぶん、文字に本当に重さがあって、わたしのなかにあるのだ。
文字が体のなかにないとき、軽くて、食べる必要がある。
あんまり文字が多すぎるとき、ものを食べられない。
人参を刻んで、夜な夜なケーキを焼いて、それをひとりで食べている。ナッツとスパイスの効いたこのケーキを、夫と娘は食べないから。
愛してほしいと思うとき、同じくらい自分を恥じている。どこにも行けないと思うとき、ここまで来てしまったと思うみたいに。
指にシナモンとナツメグのにおいがしみついている。うちのまえの八重桜はつぼみを膨らませて、足元にはとっくに来た春が種をまこうとしている。深い混乱を終えて(いくつかの化学物質の助けによって)、わたしは来た道を辿ろうとしている。こんなことをする必要はないんじゃないか、と思いながら。
そうして会いたい人に会いにいこうと思っている。
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