ぎんなん
藤原絵理子

ご神体は山だった
うさぎは皆に撫でられて
頭と耳がぴかぴか光っている
カレル橋のヤンネポの犬もそうだった
ウイルスが沁みこんでいる
だだっ広い草原に意味不明な巨石
群がる観光客を羊だと思った


人智の及ばないものは
神さまになった
上士だった退助が
自由な民の権利なんて
どこかおかしい
変節はあまりに極端すぎる
はりまや橋にがっかりする


秋のじいさんは
散歩ついでの公園で実を拾う
ゴミ拾いばさみで器用に
種を取り出してはレジ袋に入れる
帰り道ですれちがう女子高生に
鼻をつままれないよう
レジ袋は二重にしてしっかり閉じる
死臭に近いという人もいる


近所の気のいい民生委員は
公安かもしれないし
もっとグローバルな國安かもしれない
むかし特高というのがあったな
大阪では人気のある太閤さんも
諜報の名手だったんだとか


自由詩 ぎんなん Copyright 藤原絵理子 2024-04-04 21:04:58
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