四月の杞憂
ヒロセマコト
ひとりが好きな傷つきやすいあなたは
ある日突然
真新しい窮屈な制服を着せられて
教育者たちの話はうわの空で
たくさんの見知らぬ同級生と整列し
汗ばんだ手を握りしめる
十年後の四月
堅苦しいスーツ、窮屈な革靴
地下鉄の階段を降りて上って
時間通りに辿り着かなければ
頭上から号令が聴こえる
前だけを見て進め
私たちは歩兵だ
そして今
物悲しく鳴くヒドリガモの群れは
北へ旅立ち、川から姿を消した
入れ替わりにやってきたツバメが
せわしなく空を行き交う
きっと去年と同じ場所に巣を構え
やがて可愛らしい雛が顔を出すだろう
近くの竹林から響いてくるウグイスの声が
胸騒ぎを鎮める
あなたは四月を
もう恐れなくていい