春のあらし
soft_machine

丘の上で気づく すっかり囲まれている
撫ぜられ 肌が一緒に軽くなっていった
雨を逃れ
壁に守られていても
風の群が頼もしくひびく

痛みの外で 佇んでいると
何故かしらず 異様な興奮に包まれもする
苦しみが去った後
声を消した青空が
鳥の翼をくっきりと磨く

今年の 春の訪れを告げる声が
木々を
私ごと
力のかぎり揺する
ベランダはひっくり返り
猫も雷ごと発火した
誰が傍にいてくれようと
黒く 恐ろしい夕ぐれ

そのまま夜が来るはずだった一瞬
不意に 雲が途切れて見せた
隣のアパートを
もも色に染めた





自由詩 春のあらし Copyright soft_machine 2024-03-30 08:13:40
notebook Home 戻る