なんて
soft_machine
数日来 ガアッ! ガアッ!
と、鴨が静寂を引き裂いている
街灯の他に窓も見えない深更
珍しいこともあって
あれか はぐれたか喪われたかした連合いを探す雄の声だろうか
なんて メロドラマ風な想像をしても
ただの鳥の声だが 私は不安が拭えなかった 何故なら
いつもであれば 二羽でドブ川を往来する時の
悦びに満ちた低さ 穏やかさとは対極のものだから
夜明け近い窓辺を震わせる
ガアッ! ガアッ!
買い物の帰りコンクリート岸に いくら探しても
発声源の姿は見つからない
あれは 人が眠りに就いた夜の間隙に
なにかの 古い記憶によって発せられているのだろうか なんて
人にあんな泣き方が出来るだろうか
私に出来るだろうか
出来ない そう言い切ることで 残り僅かな眠りを正当化した
子どもが捏ねるものと 大人が捏ねるものとは違う
子どもらは 誰もがああ泣いているのかも知れない などと