ある日　机の上にぽつんと

見上げる空に　小さくぽつんと

夕食のときに突然、妻がぽつんと

揺れる吊り下げ広告にも　なぜかぽつんと

──見知らぬ──
「新しいことば」が

そこに置かれていたり、
空に浮かんでいたり、
突然つぶやいたり、
広告に載っていたりした

日毎に、新しいことばは増殖した

行き交う人の擦れ違い様や、
診察の待ち時間、
公園で遊ぶ子らの口々にも
新しいことばは登場した

意味は知らない
でも知らないと馬鹿にされる
なのでわかっているつもりで反応する
ああ、つまり
それは新しいことばなんだよね
そう言って、笑ったりした

いつの間にか
ボクも新しいことばを口にする
気がつくと、
新しいことばは
赤ちゃんを生んでいた

今では新しいことばの赤ちゃんが
炊きたてのご飯の上や、パンツの中にもいる