空色
中沢人鳥
照り返しの熾烈な光線に
プリズムを当てて
虹
と喜ぶ声を捕まえようと
駆け出すが
蜃気楼に溶ける
その先に本当は水溜りがあるのだろうが
鼓膜は破れている
湿度の高い畳の上で唱える
般若心経の真言は重力で落ちる
藺草に撫でられて
残った波形は
素足を滑らかに通過して
わたしより少し前を走る
そして
天球を突き抜ける
空の奥にずっと広がる
黒
その事実はあっても
見ている空は即ち青色
月から反射された光線に
信仰は宿る
振子に洗われた感情の先端が
摩耗してゆく
そしてそれを
優しさと呼ぶことにした