ためらい
秋葉竹




 

教会に
犬が
迷いながらやってきた
乾いた骨でも
求めていたのか
空を
みあげていると
鐘の音が
空気を乾燥させる浄さで
鳴り渡るものだから
昨夜の雨に降られて
乾きかけの清い人の石像は
まるで生きてるみたいに
頬を真っ赤に染め
そのあとで
近くの公園にいる
すこしだけ疲れて
沈んだ人々の濡れた心を
心臓まで浮かびあがらせる
それまで俯いていた
少女の頬に赤みがさして
青空をみあげて
花のように咲き乱れている
いつもつい悲しみばかりを
探していた犬の瞳も
青くすき透り
正しい視線で教会の中を
無言で歩く
歩くのは正しい姿勢で
とんがった
心の奥の底にある
罪を恥じているやわらかな目が
ただ
清い人みたいというのが
褒め言葉だなんて知らない
無垢な目をしている人のためらい
ばかりがため息みたいに
喉を撫でるからなのか
その不可思議な理由のカケラも
知らないうちの
ただのためらいだからなのか









自由詩 ためらい Copyright 秋葉竹 2024-03-23 20:47:18
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