春 雷
塔野夏子

窓から夜明けがはみ出してくる
それを待ち望んでいたのかも
もう忘れてしまった頃

あるいはいつしかむしろ
望むようになっていたのではないか
夜が終わらないこと を

夜が長すぎたから
もうわからない
いま夜明けがはみ出してきている
その窓から
かつては君を見送った
その記憶は
本物か 幻か

いまはみ出してきている夜明けは
本物か 幻か
いずれにせよ
その窓の彼方から
仄昏い春雷のアルペジオ



自由詩 春 雷 Copyright 塔野夏子 2024-03-21 17:06:57
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