クマの申告
アラガイs


冬眠から目覚めたクマが一番にやらなければならないのは歯磨きだ。それから税金を申告に行く。顔を洗い髪の毛に櫛をあて下着を履き替えるともうこんな時間だ。できるだけ先のピンと張った歯ブラシを見つけて蜂蜜で磨いている。冬までに蜂蜜を貯めといてよかった。と思う。
受付の残り時間が少なくなるので慌てて駆けつけたよ。待ち時間のクマたちはもう少ない。これならはやく済みそうだ。クマたちは少ないのに税務課の人たちは多くて退屈そうにおしゃべりしていた。なかには居眠りをしている人たちもいる。ガチャン!と大きな音がして人が一人床に転げ落ちたよ。鼻から赤い風船がふくれて辺りをふわふわと遊泳中。子供たちがそれを見てお母さんから手を離して追いかける。わあ~い。大谷翔平だーい!椅子の下から課長が黒いバットを取り出してきて風船を打った。ボコンという重たい音がしてしのろ赤い風船はフロアーの端まで飛んでったのだ。しのろ?針金が外れた風船は白かった。床に屈伏している職員は針金が切れたので眼が覚めたように爽やかだ。
あら、たいへん!昼のラジオ体操のアナウンスが流れてきた。隣のスーパーマーケットから子供連れの母親や年金暮らしのクマたちがやって来たのでフロアーはすぐにいっぱいになる。バイクで駆け上がるチンピラもいたりしてにぎやかなお祭り騒ぎ。高齢者の為のNISAというチラシをざっと眺めていたらeーTaxの風がフロアーを通り過ぎて、クマ祭り徐に起ち上がる。 めんどくせーんだよな。 どな独り言を呟いても風船はまだ柱時計に引っかかったまま落ちてこないんじゃない。会議は続くよどこまでも。今年はもう少し蜂蜜を貯めておこう。極上の木の実が毎年口減らしをしているのは誰のせいだろう。蜂蜜入りの飴をなめ終わったら歯磨きをして税務課に行く。ちゃんと計算はできているのか。などとしのろ。しのろ?ゆく年来る年もマクリメクリでゆくゆくはめんどくせーんじゃない? 追記※この物語はおもしろくないのでクマよりもゴジラを観ましょう。



自由詩 クマの申告 Copyright アラガイs 2024-03-11 00:14:34
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