焼き鳥
たもつ
ももを食べました
塩で食べました
レバーを食べました
タレで食べました
叔父が余命を宣告されました
ねぎまを食べました
塩で食べました
十人いた父の兄弟姉妹の
最後の一人でした
父の葬式の夜
一晩中父を罵っていました
わたしが子供の頃は
あんなに優しくしてくれたのに
父と仲良しだと思っていたのに
つくねを食べました
タレで食べました
大人になると
見たくないものまで見えてしまう
明日お見舞いに行こうと思います
ももを今度は
梅肉で食べました
まだあの夜のことは
根に持っています
目の前にはいくら食べても
食べ尽くすことのできない
無数の焼き鳥
明日が来なければいいのに
と思うのは
お見舞いをするのが嫌なのか
いずれやってくる
叔父との別れが嫌なのか
わからないけれど
ねぎまをタレで食べました
通ぶってみても
最後はやはりタレなのだ
そう思いながら
明方近く
タレに溺れる夢を見ていました
(初出 R6.3.5 日本WEB詩人会)