病院
たもつ



廊下に咲いた花を
摘んで歩いているうちに
迷ってしまった
春の陽が差し始めた病室に
戻りたかっただけなのに
白い売店や
柔らかな窓ガラスに触れて
いくつもの季節に
取り残されていった
日々の暮らしの中で
少し嫌な匂いがすると
看護師の薄いスクラブで
新しい親指が産まれている
お医者さんが命に似たものの
問診をするけれど
何を差し出せばよいのか
本当は誰も知らない
海岸へと続く受付の所で
係の人が海風に揺れながら
息の継ぎ方を案内している
病室は今ごろ何度目かの
春の陽射しが溢れ
ふと沖の方に目を向けると
外の海に向かって泳いで行く
美しい作業療法士の群れ





(初出 R6.3.1 日本WEB詩人会)


自由詩 病院 Copyright たもつ 2024-03-02 01:03:16
notebook Home 戻る