夢の橋
atsuchan69

夢の橋を渡ると、
ショートボブの君がいた
 会えて嬉しい
と、可愛い仕草で笑う

それからふたりは、
君の村まで歩いて行き、
南国風の立派な家で
沢山のキスを
揚げたての天ぷらで食べた

虹色のつけ睫毛をした
君はパチモンで、
胸のない人だった
 釣りは好きじゃない
と言ったけど
無理やり防波堤へ誘った
麦わら帽子をかぶって
君は日傘と水筒、
ボクは竹竿とバケツを手にした

海には網でかんたんに掬えるほどの
小さな女たちが泳いでいた
 針の先に唾と男の匂いをつけて
 竿を振れば、ほら! 
 すぐに喰ってくる
 面白いだろ

 あれ、君は女がキライかい? 
ボクは釣った女をリリースした

 この島じゃ、
 わたしみたいなパチモン
 誰も相手にしてくれないの
君はそう言って、水筒の水を飲んだ
 そりゃあ、こんなにかんたんに
 女が釣れるんだからなあ
ボクも水筒の蓋で水を飲んだ

 じゃあさ、島を出ようよ

ふたたび夢の橋を渡ると、
二丁目の路地がすぐそこにあった
 美味しい天ぷらの店があるんだ、
 ボクについておいで

無骨な手が、華奢な手をつないだ

三丁目の天ぷら屋まで
ちょっと歩いたが、
そこは明治の頃からやっている店で
テーブル席で天重を食べた

大満足で店を出たあと、
居酒屋の酎ハイで乾杯をした
都会の賑わいが
君をほんの少し宙に浮かせていた

 今夜はそこのホテル
 ジェンダーフリーだし、安いから

こうして、身体は
ただの縫いぐるみに過ぎなかった
裸になったふたりに、
性別なんていらなかった

 怖いかい

 大丈夫、どうせ夢だから








 ◆初出 日本WEB詩人会 2024.02.25


自由詩 夢の橋 Copyright atsuchan69 2024-02-28 07:30:51
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