くれないの風が吹く
秋葉竹


 

イヤホンが外せない深夜3時に
けっこう珍しい白黒の夢を二度みた

なにも起こらなかった昨日今日の
彼の真っ黒な慟哭を聴いた気がするよ

すべてを棄てたって云ってたよな
なにひとつ悲しいことなどないなんて

ずいぶんとありきたりな嘘をついてんじゃん
殺されるほどの嘘はついてないさいやマジで

洗いざらい綺麗さっぱりわからないことは
わからないままで僕たちは自分を信じた

お前のことも信じた無条件に信じた夜は
みんな陽気に星空みあげて笑っていたな

だれも心配しないもんだからひとり雪に
まみれてニコニコ冬を楽しんでんだぜ

僕はというと悲しみを心に飼い慣らして
真っ赤な風船を心で膨らませて

そのうちバーンッ!って割れて粉々になる
やさしい抱擁が僕を離さなくなるさ

今はまだすぐに離してくれたけど
悔しくてほんとうに泣きそうなときは

なにもかもを忘れて僕のために
隣に座ってぎゅーって抱きしめてくれる

メロンの味の唇まで味わわせてくれる
そしてだれも不幸になんかならない

忙しくて 時間の奴隷の彼も彼女も
今日だけは一緒に美味しい言葉を口にする

だから悲しみをふと笑ってわからない
二人だけの夢でみた虹のように大好きになる

それにしても生きてゆくのに君は必要だと
しあわせの笑顔でありがとうという

最初から好かれやしないんことなんて
心を読むみたいにわかっていたから

最後くらいしあわせの笑顔でありがとう
って云ってただの挨拶のフリをする

最後くらいしあわせだった笑顔でニコッと
君に見せたいだけのとっておきの紅の風が吹く










自由詩 くれないの風が吹く Copyright 秋葉竹 2024-02-27 23:35:03
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