夕春
soft_machine
あちこちでびん笛がはじまる
うち幾人かは胴をうまく叩いている 薄暮
目は子ども時分からよくない
たくさん撲たれてきたからさ
と、隣のじいさんが笑った
にごった水晶の弛みや
かわるがわる火花を吹かす
肉の赤いや黒いやが
天を圧す炎に舐められていた日々ごと
ぶ厚すぎる壁の飾りの上で
淡すぎる月の両輪が
重ねた雲から
時おり覗いたら
このまま溶けだしてしまうのさ 暮夜
窯はまだ
春を染めきらないというのに
逃げだしてしまう
窓のほうは
そらに温められているから
と、じいさんが再び笑った
こころが化石になってなお残り
たまには赤い血もながす