メモ
はるな


また体の向こうがわで文字が跳ねている。戻っておいで、戻っておいでって思いながら見つめていると溶けて行ってしまう。さきに起きた娘が炭酸水をのみながら、まだ眠ってていーんだよ、と言う。やさしい。朝からねそべったまま動画サイトを見たいのだとしても。

まま、ねむって。よこになって。そう言って布団をかけてくれるので、そうか、それがいいかも。でも、文字が溶けてしまったんだよ。と思っているけど言わない。それくらいの分別が、時計を見てまだ7時を過ぎたところだから、という分別が、部屋がきちんと暖かく、あかるいから…という言い訳と大差ない分別が、わたしを布団からださない。
わかっている、この世界は自分で考えているよりもやさしい。それなのにわたしはどこまでいってもこわいのだ。


散文(批評随筆小説等) メモ Copyright はるな 2024-02-19 14:35:11
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