あたりまえの、キス
望月 ゆき

あたりまえの、キスを、ください


追いかけるたびに 
春はもう
ふりむきざまの、目くばせ
早足にからまるイヌフグリの、青
追いつかないのは
季節のせいなんかじゃ、ない、と


のばした指先でさがす
あたりまえのキスのゆくえ
目を閉じたときにふれるもの
ふれて、とおりすぎるものの
ゆくえ


キスする直前の、鼓動
ひじの先をつたう、振動
あんなに、好きだった、のに、


まぶしく吹く風に カーテンがひるがえると
向こう側の記憶がのぞく
そこが、部屋の内側か外側かは知らない
たしかなことといえば
あなたは
いつも内側にしかいられなくて


あなたは
さようなら、と同時にも
それができる人だった



自由詩 あたりまえの、キス Copyright 望月 ゆき 2005-05-17 23:44:08
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