無題
凪目

それは死体だよ
もう死んだ女にあなたは絶えず声をかける
それはずいぶん前に腐敗した皮と骨だ
何十年もゴミと虫が巣食っている
あなたがそれを生き物だと勘違いするのは
彼女が動いて話すから
まるで生きているみたいに
ときどきひどくきれいに見える
それは穢れた窩だ
耳を貸さないで
僕は彼女の墓守りで
彼女が誰かに取り憑こうとするとき
たしなめたり
ささやいたり
撫でたり
抱きしめて祈ったりする
どうかみんな幸せになりますように
これ以上誰も苦しまなくてよくなりますように
彼女は笑って僕を踏みにじる
僕は彼女をすごく大事に思ってる
彼女もきっと僕を愛してくれていると思う
彼女は契約と所有の効力を信じる
僕はそれを信じない
彼女がこれ以上何者も呪わないように済むためなら
僕はなんでもやろうと思う
弔わなければならない
怖がらせて悪かった
本当にすまないと思ってる
もう行くよ
達者でね


自由詩 無題 Copyright 凪目 2024-02-12 23:16:52
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