雪と天道虫のファンタジー
ひだかたけし
雪が舞い始めて
都心は次第に白一色に
行き交う人々一人一人の背に
不意にふっと小さな天道虫が留まる
艷やかな赤に黒の斑点の色合い照り輝く
円やかな小さな天道虫が留まる、
雪は降り続けて雪は舞い
独り独りの人の身が
やがて発光し始め
なのに
人々は気付かない、自らが発光して居ることに
そうして
天道虫は還っていく
発光し続ける人々を見守りながら
天に還っていく
∴
雪が舞い続けて
雪は降り続けて
都心がすっかり純白に埋もれる頃、
震える冷気に
人人人、
いつしか透明になって
いつしか透明に発光しながら
発光する透明 相変わらず忙しく生き交いながら
一羽の漆黒に煌めく巨きな鳥 天空を優雅に横切っていく