魚
ぽりせつ
冬の明け方は
町のいたるところに魚の群れが現れる
もっともよく見かけるのはニンゲン魚で
その横をついてまわるイヌ魚
校舎をよこぎるネコ魚やセキレイ魚がいれば
そのまま森へと消えるカモシカ魚もまれにいる
まだ町の目覚めきらない
空気のほんの透明なあいだだけ
群れは姿を現す
古い手紙をよむひとが
いつもどこかにいるような
そんな小径を
魚たちも知っていて
待雪草の咲くころ
彼らは姿を見せなくなるが
絶えたわけではない
陽とともに川へ流れこみ やがて海にたどり着く
そこであたらしい青い眼をさずかるのだ
群れはつづく
たとえ海のてのひらから 空のてのひらへ
手渡されていく時がきても
彼らは彼らの明け方を
ただ待っていればいいことを知っている
先頭も 最後尾もないいのちの順列がある
彼らを追って歩いてきたわたしの後ろに
魚たちがつづいている