ああ、そいつは俺の事だと思っていたのに。ふふん、
と猫が笑ったのが見えて、ああ、そいつはお前の事だと
わかった。お前のひとことにしびれた世界中の奴らが、
今でも夢の世界で揺らされているというのに、俺の言葉
なんて薬にも毒にもなりゃしない。
ニャ〜、でいいのか、僕の言葉よりもニャ〜でいいの
か。今日も君のニャ〜のひとつで、ポエムなんてやめだ、
やめだ、と僕の仲間がまた増えてゆくというのに、その
たんびに僕の心臓からこぼれ落ちそうな言葉、飲み込ん
でゆく。ただひたすらに飲み込んでゆく。
富来に向かう国道に猫の目交差点があります。そのい
われは聞いたほうがいいですか。聞かないほうがいいで
すか。ほら、もうそれだけの事でことばを紡ごうとして
いるけれど、それはほんとにあなたのことばなのですか。
目を閉じれば、月がのぼり、星が降って、朝日に消えて
ゆく、すべてのことばは。
fromAB