柚子湯
そらの珊瑚

小さな庭の忘れ柚子
採ってみれば中がブカブカしています
ちょっと前まであんなに固かったのにどうしたことでしょう
果汁を絞ってみたところで焼き魚の足しにはならないでしょうね
この数ヵ月ですっかり年とった感の柚子ですが
それでもちゃんと柚子の香りがしています
何もかも帳消しにしてくれそうな爽やかさです
今季一番の寒気がやってきました
湯に浮かべてお柚子様を労れば
指にしみました

柚子の木は硬い棘を持っていて
うっかりそいつで傷つけたんでしょうが
しょせん目に見える棘
わたしの棘に比べれば可愛いものです

傷から吸収された酸っぱい成分を
わたしの身体が不思議がっておりますので
「それは優しい眠り薬だよ」と教えたところです


自由詩 柚子湯 Copyright そらの珊瑚 2024-01-16 13:18:23
notebook Home 戻る  過去 未来