雪の降る、音。
山人
少しばかりの軽い眩暈は、暗闇とうっすらとした雪明かりのせいなのか
それとも、未明に降り出した重い湿雪が足にまとわりつくためなのか
たぶん、それは眩暈とかではなくて
朝のうちに歩いておこうとする、重い義務感がそうさせているかもしれなかった
真冬の暗闇は、かすかに雪の白さが感じられる明るさがあった
雪の量は、例年になくひどく少なくて
ただ、今日、夜明け前の朝は雪が降りそそいでいた
新しく新雪が積もった道路は歩きにくくて、足の一歩づつが粘るようだ
頭の帽子の上にさらに防寒着のフードを被っていた
耳の横の繊維の近くで、雪の一つ一つが衝突し、さらっ、さらっ
と触れる音がする
さらっ、さらっ、さらっ。
雪の結晶は幾重にも重なり
ひとつづつの塊となって私のフードにあたり、くずれてゆく音だ
どことなく雪同士が、ひそひそひそとつぶやくように防寒着に触れる
妙に、懐かしいような。
これはほんとうなのだろうかと思うほどの時間の存在がそこにあった