手習い
形代 律

幼いとき
旧電車通り と大人たちが呼ぶ
ながい一本道を渡り
手習いを教わった

空も海もしらない
蛍光灯の平板な光がまぶしい

美しくも醜くもない
手本を右に
半紙をよごしてばかりいる

  音楽は静寂の美に対立し
  それへの対決から生まれる

――では、言葉は?

彼は今日もふるえる手で墨に浸した筆先で
いまにも半紙を濡らす
すなわち

日々の祈りを学ぶ
よごしながら すこしずつ


自由詩 手習い Copyright 形代 律 2024-01-15 03:59:17
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