冬の日
リリー

 畔のみちを濡れながら
 駈けて行く少年が
 不意に 透明になってしまった

 もう同じ姿では帰ってくるまい

 寂しさが静かに
 胸を浸してゆく時がある
 貴方と再び相逢う日のない事を思う時
 空気はいやに
 冷たく

 今朝も
 唇に紅をぬり
 朗らかに笑っていた
 私は

 昨晩 涙を流した為に心の中に
 もはや動き流れるものが
 無くなったというのか
 まるで黄昏に
 田の中で
 煙かすかにたなびかせている
 もみがらの様

 ああ、
 君 居ます
 東の空は時雨して
 湖は白く 広々とある



自由詩 冬の日 Copyright リリー 2024-01-14 11:01:45
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