Slip Away
ホロウ・シカエルボク
暗く冷たい夜の中に
きみはわずかな羽織ものだけで
どうしてそんなふうに
軽やかに歩いていくのだろう
止まったままの時計台の針が
過去に溺れて行くぼくのようで
見送るのもそこそこに
静かに窓を閉めることしか出来なかった
きみの帰る道を
ぼくがもう二度と歩くことはない
もしいつか
そこに足を踏み入れたとしても
それはもうきみに続く道ではない
なにもかもわかっている通りで
迷子のように立ち尽くすだろう
まだ暖かい秋の日
急に降り始めた雨に濡れながら
大声で笑いながら歩いたことがあったよね
なにがそんなに愉快だったのか
どうしても思い出すことが出来ないんだ
真っ暗な部屋の中で
きみの足音を聞いていた
それは次第に
闇に溶けて
ぼくは
どんな種類のおやすみも言えずに
機械のように眠った
再び目覚めた時
訪れる容赦ない朝に
いまから震えながら
ぼくらは確かに間違っていた
でも
間違ったままでいられるのはきみだけなんだ