珠玉の器官*
ひだかたけし

薄氷の上を
危うくも繊細な
ステップ踏み進む
いつ崩れ瓦解しても
後悔だけはしないように
慎重に大胆に歩み行き進む

この社会は獰猛な場所
人と人が競い差別し殺し合い
狭い半径に官能愛が微笑んで
天返に隠れ胡坐かく支配者共は
死の恐怖を肉欲で埋めている
悪魔に取り憑かれ気付きもせず
金、セックス、美食、理性、暴力、
そう 上辺では優しく平等を装い
人々が吐き出す過剰なエネルギーを
自らの肥え太る欲望のために巧妙に収奪する

薄氷の肉が
危うくも繊細な
命の鼓動刻み
いつ崩壊しても
後悔だけはしないように
慎重に大胆に生き生き歩み進む

この薄氷の身体を
与えられ与えた
魂の珠玉の器官を
もうこれ以上、
踏み付けないように
踏み付けられないように。








*『珠玉の道具』改訂


自由詩 珠玉の器官* Copyright ひだかたけし 2024-01-09 17:06:08
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