残高
本田憲嵩

俺「向日葵がうな垂れるほどの猛暑の中、
  ヤッケを着ての作業、
  水、泥水、土のけむり、構内のホコリ、そして自らの汗、
  そしてときには鉄骨、
  そんな、
  荒々しい太陽にまみれた、
  ヘルメットの夏だった」、


Y「オー 健康上の都合により、
  飲料水はすべて砂糖不使用、
  となってしまった、
  なかなかに変革の年」、


俺「オー 年齢、というものを考慮しなかった」、


Y「アー しなかった」、


「なおかつ、
 コロナウィルスに感染して、
 入院歴のある父親を気づかい、
 約10日間のホテルでの軟禁生活を、
 余儀なくされた夏」、


俺「アー そういえば、
  なんだか最近は父親の頭髪の積雪量がことさらに多い、
  いつの間にかその体躯はどこか枯れ木を連想させる」、


Y「オー もしかするともういよいよその時は迫ってきているのかもしれぬ」、


俺「オー おたがいに」、


Y「アー おたがいに」、


俺、Y「さんざん先のばしにしてきた、なにか、




「アー オー、




   ※


物価が高い、
ひとり、帰り道の途中で寄ったコンビニのATM、
二万円を引き出して、
残高の数字が鋭利となる、
すみれ色の夕陽が、いままさに沈もうとしている、


ビニール袋の中には、
「とびきり美味しい疲れ果てごはん」、



自由詩 残高 Copyright 本田憲嵩 2024-01-08 23:20:13
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