Okunoto 4 seasons     
AB(なかほど)


あじずしが浜町出店に並ぶ頃
親っ様の漬けた馴れずしがふるまわれ
キリコの灯が浜町をねり歩く頃
虫送りの火が畦道をねり歩く
やがて日が沈む頃
月が出るのを待っている
廃線脇で
次の電車と月が出るの待っている
虫の声と踏切りの音は
いつまでも
凸凹配位座で鳴り続けている
 
 
 
藻採り雪の近づくと
炉端できゅうきゅうと
支度をする祖母は
乙女に変わる
潮の滲みて来ないよう
きゅうきゅうと
生憎の戻り雪になるも
膝をさすりながら
華の起つ藻場
の向こうを眺めている
 
 
 
岬の先に桜が咲いている
三つの頃から
その向こうまで行こうという気持ちでいつも見ていた
けれど
ついこの前
シーサイドラインが開通した
幸いにも桜は倒されずに岬に残されたけれど
もうこちらとあちらのシンボルでもなく
僕らの憧れでもいられなくなってしまった
はじめて側に寄って
藤の蔓が上の方までつよく絡まっているのを見ていたら
ずいぶんと頑張ってきたのにね
と逆に言われてしまった
 
 
 
少し湿ったね と
旧道沿いの
あしもとのほうから
梅雨のにおい と
祖父のにおいがした
ふりかえると
あたり一面にシャガの花
思い出すひとがいるから
咲くのだろう
もう一度ふりかえると
祖父の家
明日から空家となる

 
  
 


自由詩 Okunoto 4 seasons      Copyright AB(なかほど) 2024-01-08 09:38:13
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