形代 律

きみに逢うために
踏んだ路を歩きなおすのは

 唯是西行
 不左遷

と かの詩神ほどの気概や嘆きを抱いていた訳でも
まして花の匂いに誘われたからでも
ない

梅が枝を
敵意のすがたで空へと手向ける季節

太陽は悠長な時を
かけて海と交わる

赤を青が
抱擁する それを
黄昏 と
儚む人々より

すこしだけ永い逢瀬と離別の
残光のなかで生きるひとは
赦されたように
いつも足がおそい

眠たい光速の歩みで
疲れ果てる そのとき
ようやく触れる瑞々しさ

それは
音もなく
光もないが
この地でもっとも宇宙に似ている


自由詩Copyright 形代 律 2024-01-05 03:51:24
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