鏡よ、鏡
そらの珊瑚
亡くなった犬が鏡の中から
わたしを見ている
わたしの手のひらに隠している
おいしいものを知っているのだろうか
名前を呼ぶと返事のように尻尾を揺らす
黒い鼻はしっとりと濡れ
いかにも健康そうだ
おまえを迎えた時はまだ子犬で
だけどあっという間におまえの時間は
人の時間を飛び越えていった
おまえはまだ知らないのだろう
そしてこれからも
知ることはないのだろう
自分が死んでしまったことを
生きている者は死を語るけれど
死んでしまった者は永遠に
その死を知らない
カガミ ヨ、カガミ 魔法ノ カガミ
また、おいで
いつでも、いつだって