空の門番
AB(なかほど)

あてもない夜を歩いていると
石門だけが残った丘の門番に出会った
夜も長いので空の話を聞かせてくれ
という ので
十二番目の石から昇る太陽について
ありったけの知っていることを語ってみた
それがあの太陽なのか
とその石の方角を見据えながら
門番は吐息まじりにつぶやき
ゆっくりとうなづき
一時の沈黙の後
やはりそうなのか
とまたうなづく

やがて僕は門番の仕事に気付き
得意になって続けて喋ろうとしていた月のことも
プレアデスやおおくまや
地球のまん中やパンゲアや
ティラノサウルスが走れなかったことや
ホプキンスやドレークの方程式なんかも
おそらく何も要らないのだろうことに気付く 
喋ったところで
それがあの月なのか、竜なのか
と石を見据えるだけなのだろう



それから
僕は知らない星をいくつもつなぎあわせでたらめな絵を描き
とぎれとぎれの話を大きなとても大きな声で嘯くと
ようやく腰を上げた門番は無精髭でにこりとして
十二番目の石から昇る昼と夜のことを詠いはじめた
今も続く詩を




自由詩 空の門番 Copyright AB(なかほど) 2003-11-28 22:25:29
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