夕立
たもつ
別れは皮膚のあたりが
ひりひりする
トマトのゼリー状のところ
わたしが育てた何か
剥離するその先に
夕立だけの街
手を動かせば
いつも触れるものはあり
その形状も
その名前も
そのわたしも
昔のそら耳に書かれていた
色をなくして
アコーディオンが
壊れたまま
雨に放置されている
降るだけの雨に
歌うだけの空に
落ちるだけのわたしに
委ねないで皮膚の続きを
酸素の中を
泳ぐ夢を見た
目が覚めることも忘れて
わたしはいつまでも
ただ優しかった
(初出 R5.12.19 日本WEB詩人会)