大杉
リリー

 延暦寺西塔の居士林、
 森閑とした闇に包まれ坐る道場
 打ち鳴らされる警策で
 突如 目を見開くと

 秋霖

 湿った杉の並木が
 生い茂り
 霧のなかに太い幹の影を映して
 聳え立つ

 未明

 深々とつづいている山の奥
 明けくる光へ
 背を見せて遠去かるものの姿
 見送った

 あの奥に

 あるともない風の動き
 如何せん と大杉が、
 生命の激しきことの哀しみ
 問いかける




   (近江詩人会「詩人通信」2023年12月号掲載 初出を改稿)

 


自由詩 大杉 Copyright リリー 2023-12-17 17:28:22
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