蒼月
リリー


 週末の京都駅
 待ち合わせたプラットフォーム
 喧騒の波間みつけた
 あなた

 月に一度も逢えない
 あなたの指が触れる洗い髪
 ムースで整えて
 玄関飛び出して来た
 夏の午後

 まだ濡れているよ と笑った
 その目、
 貝がらから海の音きく瞳に
 ふと 羞じらって
 視線そらし

 (ちゃんと乾かして来たわよ!)
 小指の爪の先ほどの
 密かな反発
 線路に
 陽のかげる時

 見送ってしまえば
 引き潮の浜辺
 空の色も急に沈んだ

 そして あなたは
 冷たい今夜の月の流れに美しくなる人



自由詩 蒼月 Copyright リリー 2023-12-14 20:45:43
notebook Home