午睡
レタス

あまりにも静かだ
軽い欠伸をし
目蓋を開けると
まゆの中に横たわっている
それは刹那に消えた

暖かい
そよ風が柳を揺らし
水面には睡蓮が浮かんでいた
ウスバカゲロウが無数にふわふわと舞い
それを狙った鱒が時おり跳ねる

池の向こうに東屋があり
ぼくは誘われるように歩きはじめた
予感が胸もとに走る
そこにはKが池を眺めていた
足音に気付いたのか視線が交差する

ぼくたちは以前の蘇護(そご)を忘れ
互いの視線は柔らかくなった
そして名前を呼びあう
Kの長い黒髪が風に揺れ
ぼくは彼女を抱きしめ泣いた



此処は何時もと変わらない部屋
やがて余韻は無くなり
ふらふらと立ちあがる
ポットで湯を沸かしてアールグレイを啜った
遠い想い出は絵画のようだ


自由詩 午睡 Copyright レタス 2023-12-10 15:58:25
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