月夜の国
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夜毎生まれ変わっては
終わろうと必死に光る
満ちるのも欠けるのも
月にとっては同じこと

女の死体と
人を呪う大樹
枯れない花を捧げる
絵の中の恋人

国を亡くした王子さまは
ただの一人になって
初めて泣くことができた
それが皆の夢だった

家を追われた子
明日の朝飯
繁華街のカラスは
どこで眠る

だらしなく伸びた爪を
恋人のために切る
生まれた時から醜いと
知ることを病むと人はいう

響く鈴の音
風の声
凍り付く雲
沈んだ陽

境は必要なのだろうか
誰も目を覚まさない
子供を大事にするのは
もうテロリストだけなのか

灯火が消えたとて
散るような命ではない
霧消するような
祈りではない

あなたのように
すべてを愛することはできない
そして
すべてを憎むこともできない

丘の上に昇った月が
木々を照らし
故郷と同じ空を見せる
もう叶わない夢を見せる


自由詩 月夜の国 Copyright 303.com 2023-12-06 03:06:33
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