地の果て
レタス

東の風が吹いていた
醤油工場から醪(もろみ)の匂いが漂う路地
ぼくはスニーカーの紐を堅く締め直し
重いザックを背負い直した
遠くに行ってしまう前に白い灯台を訪れたかったのだ

乗客は三人だけだ
二両編成の電車に揺られながら
キャベツ畑をそれとなく眺めていると
突き付けられた緑の紙にサインした朝を想い出す
徹夜続きで乱れた文字列は
何時ものぼくの筆跡ではなかった
青白い涙が一粒流れて
頬を叩き深呼吸…
もうすぐ灯台近くの駅に着く

灯台の入口に居た黒猫がぼくを招きニャアと鳴く
螺旋階段を昇ると猫がぼくを追いかけてくる
望楼に立つと潮風が髪を荒く撫で
手摺りに掴った
黒猫はもう居ない

群青の海は荒く
眼下の岩に白波を叩きつけている
東の空には入道雲が立ちはだかって
ぼくの未来予想を示していた

叫んで 叫んで 叫びまくった

スニーカーの紐は堅く締め付けている
何も怖くはない

明日は西の街に立っているのだ


自由詩 地の果て Copyright レタス 2023-12-04 01:02:07
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