無人駅
たもつ




じゃあ、ここで、と
出張の帰りに送ってもらったのは
田舎の淋しい駅だった
上りの列車は発車したばかりで
あと小一時間ほど
待たなければならなかった
他に誰もいないホームには
クリスマスに向けて
動物や木をかたどった
イルミネーションが飾られていて
それが余計に淋しさを増していた
暫くして、犬を看取った、と
妻から連絡があった
八年飼っていた犬だった
独立心が強く賢い犬だった
僕よりずっと妻になついていた
無人駅なのに
何もしてあげられなかった





(初出 R5.11.28 日本WEB詩人会)




自由詩 無人駅 Copyright たもつ 2023-11-29 07:12:45
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