gastronome 21-30
AB(なかほど)


まさるの家で山羊汁があると聞いて出かけた
子供のうちは山羊の脂に中るということで
その場に呼ばれることはない
 
 

その時計の狂っていることを祈りながら
向かいの能登屋の蒸し器からもれる湯気
をぼんやり眺めながら
 
 
 
カラカラリンと卒園式
はじめてのさよならは
カルピスの味
 
 
 
なにか? とあまりにも涼し気に微笑む君
のせいで、僕はとりあえず牛乳飲んで
落ち着こうと思う。確か僕は
 
 
 
参道下の古ぼけた店で
岩魚の塩焼きを齧る
雨が降ってるのでゆっくりと齧る
 
 
 
深秋の空きっ腹と夜を更かすコオロギだよ
リンゴのような君へ
もう思い出せない夜にしておくれ
 
 
 
チャルメラや焼き芋屋さんなんか
の声が夜に響き渡ると
なぜだかきゅっとしがみついてきた
 
 
 
従属栄養生物は生きるために食べる
生きていたものとたずさわった人の命に
削った時間にいただきますという
 
 
 
藻採り雪の近づくと祖母は乙女に変わる
生憎の戻り雪になるも膝をさすりながら
華の起つ藻場の向こうを睨んで立つ  
 
 
  
ハンバーグに夢をぎゅっと詰めるその手が
ほんの少しだけ小さすぎて
はみ出したその部分が
なんだか美味しそうだなあ

   

 


自由詩 gastronome 21-30 Copyright AB(なかほど) 2023-11-26 21:10:16
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